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収集と愛着 /Attachment and collection

 本研究では収集癖におけるモノの集積が与える影響とその原因に着目した。集積するモノの価値と意味、収集行為そのものの意味を考えるために自分自身の部屋に閉じ込めた非常に内向的な収集癖に目を向け、散乱した部屋から研究対象として外部に公開する実験を行った。

 収集は人間の生活において広範囲にわたって見られる行動である。たとえば幼少期には誰もが石集めやシール集めなどを夢中で行った経験をもつのではないだろうか。その根底にはモノに対する愛着が備わっている。しかし大人になってからも石やシールを夢中で集めることと同じ傾向の習性を持ち続ける者は少ない。  その理由のひとつとして収集行為が必ずしも利殖の手段として存在しないという点がある。モノ自体に魅力を感じたとしても自己の利益に繋がらない場合は無駄であると判断され、集めるという行為へ発展しないからだ。そのためか収集物は日常の実用的な機能からは切り離されることが多い。

 つまり収集行為は非常に個人的かつ内向的な要素が強く、ひとたび外に触れると人からは時にムダやガラクタ、ゴミと表現されてしまう。そしてこれこそが収集の本来の特性である。自身が良いと思ったものを金銭的、実用的な利益を顧みずただひたすらに集めるという行為からは対象物への強い愛着を感じることができる。他人からはゴミと呼ばれるような収集物でも当人から見るとそれぞれに意味が存在し、それがモノに対する付加価値となって愛着を深める一因となる。収集はモノに向けられた愛着が含まれてこそ真価を発揮するといえる。

 またインターネットが発達し情報に溢れる現代社会において、過剰に生産されるモノという存在はリアルを感じさせる。更にその中から自主的に選別したモノを集め、それに囲まれて生きるという生活は自己満足を飛び越え、自己を肯定する力すら持っているように思う。モノの魅力への気付きが愛着へと変化し集まった収集物は、その存在自体が収集者の欲求を満たす力をもつ事で自分と切っても切れない関係に発展していく。そこには人とモノとの強い結びつきを感じることができる。

  • Name: 本木 杏奈 / Anna MOTOKI
  • Countory: Japan
  • Category: Installation
  • 展覧会ではポートフォリオの展示となります。

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