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胎生 /Viviparous

 生物達が進化を繰り返し多種多様に枝分かれするなかで、現在の人間や昆虫となる脊柱動物や節足動物は早い段階で枝分かれした。そのせいか私たちは彼らを見る時にどこか遠い存在に感じてしまうのではないか。それは姿や形が大きくかけ離れているということだけではなく、根本的に他の生物とは進化の過程が異なった生き物だからなのだ。そしてもし虫と人間が進化の過程で交わっていたらどうなっていたのか。  これは「もし人類がこれから虫のように進化していくのなら」「もし人類が虫から進化したとしたら」と進化の流れを問い直す作品だ。そして人間が虫へと変身していく「過程」つまり「物事がまだ終わらない途中の段階」という曖昧で中間的な様相をも提示している。  本作は進化の過程で人間と虫が融合した新しい生物を模索した。ぶら下がっている大きな虫は、腹から螺旋状の管を出してうずくまる。管は虫の上の傘に繋がり、血液の循環を見ることができる。これは人間の産む仕組みである胎生を模したものだ。つまり、宙づりになった虫は胎児であり、腹からのびた螺旋状の管は胎盤なのだ。鑑賞者は暗い母体の中で成長する胎児を見るという構図だ。本来なら卵で産まれる虫たちを人間と同じ産む仕組みにすることで、双方の中間の姿を表現した。  ここで留意した点は、双方の身体的な特徴を融合させた新しい生物を作るということではない。人間の女性は妊娠してから出産までのおよそ十月十日、母体の中で胎児を育てる。しかし、虫は産卵をして多くの卵を産む。もしこの出産方法が逆になったら、母親はどのように感じるのだろうか。人間のように出産された虫はどんな成長をするのか。と様々な疑問や戸惑いを与え鑑賞者を刺激する。

  • Name: 坂本 睦月 / Mutsuki SAKAMOTO
  • Countory: Japan
  • Category: Installation
  • 展覧会ではポートフォリオの展示となります。

Project 07a
Project 07b